大阪府地域生活定着支援センター 益子 千枝

2019年5月31日

大阪府地域生活定着支援センター
相談員: 益子千枝

学会員の皆様、いつもありがとうございます。
 このたびは、私が携わる事業のご紹介をさせていただく機会を頂戴し、ありがたく筆をとらせていただきました。 
少しのお時間お付き合いいただければ嬉しいです。

【自己紹介】
 説明すると少し複雑になりますが私の所属は「大阪自彊館(おおさかじきょうかん)」という社会福祉法人です。明治時代から、大阪の特に西成区やその周辺の貧困対策に従事してきた救護施設を中心に運営しており、昨年創立100周年を迎えました。
 私がその法人に入職したのが平成12年のこと。最初に配属された救護施設ではアルコール依存症の方たちの担当を経験させていただきました。その頃、大阪市はホームレスの数が全国1位であるとの調査結果が出されたことを受け、大阪市内のホームレスの方への巡回相談相談事業が始まりました。私はここに9年半相談員として携わりました。その後、今の職場である「大阪府地域生活定着支援センター」という事業に相談員として出向することとなり約4年が経過したところです。

【職場の紹介】
 「地域生活定着支援センター」とは、約3年前から厚生労働省が予算化した通達による事業です。各都道府県に1ヶ所(北海道のみ広域のため2ヶ所)が順次設置されてきました。ですから、皆様がお住まいの都道府県にもある事業です。

  どんなことをしているかといいますと、刑務所などいわゆる矯正施設に入所している受刑者のうち、高齢または障害があり、出所後帰る所や頼る人が無く、福祉の支援が必要と思われ、かつ当人もそういった支援を希望し、その調整のために個人情報を必要時出すことを了解する人を対象に、出所前から、対象者と服役している矯正施設内で会います。そこで要望を聴いたり、触法行為に至った背景などから今まで気付かれなかった障害や疾病を明らかにし、必要な支援や治療計画を本人とともに立て、出所後の生活場所や支援を準備して、その人が再び矯正施設に戻ることなく社会で生活できるよう調整するというのがメインの業務内容です。それに加え、出所してしまえばサヨナラではなく、地域での生活に馴染めるまで、その人や関係者と協力をしていくことも大切な業務です。

 上記は、刑務所や保護観察所が選んだ決められた条件に当てはまる人だけを対象にしていますが、それ以外に、家族や住民、福祉や医療の従事者、弁護士などから「最近、警察に捕まった、これからどうしたら・・・」とか「過去に刑務所に入ったことがある人が通所しているが、対応に苦慮している、アドバイスが欲しい」あるいは「弟が刑務所からもうすぐ出てくる。支えたいとも思うが心配もあって・・・」というような様々な触法行為をキーワードにした相談があり、できうる対応に尽力しています。

 前述したように、各都道府県ごとに開所時期も、ケースの対応数も様々。当然ながら人口や土地柄が違い、事業を受託している組織も母体が障害者施設であったり、ホームレス支援団体であったり、医療法人であったりします。また、その都道府県にある矯正施設の種別や数が違います。そう言われてもピンとこない方が大半かと思います。

マニアックな話になりますが、例えば関西でご説明しますと、大阪には大阪刑務所という大規模な、複数回受刑している成人男性のみを収容している矯正施設があり、隣接の和歌山県には女子刑務所が、奈良県には少年刑務所、滋賀県には初めて受刑する成人男性だけを収容する刑務所、京都府には医療少年刑務所もあり、兵庫県は矯正施設の中では最も新しいタイプの社会復帰促進センターがあったり。数や種別を全て説明できていませんが、お伝えしたいことは、このような何層にもなる違いのなかで日々戸惑い、試行錯誤しながら少人数(1センター4人から6人)かつ低予算で行っている事業だということです。ちなみに大阪府では、2010年7月1日に開所、2013年3月現在で406ケースに関わってまいりました。

【福祉心理学がとても必要な現場】
 事業に携わって気付き悩むことは、一般的に福祉が必要な人への制度や予算、社会資源の数が元々足りていないこと。質の向上も然りです。

 つまり、障害、高齢に加えて刑務所を出てきたという経歴が加わると、住むところを決めることだけでも至難の極みです。特に罪名が殺人や放火、性犯罪であると尚大変です。

 しかし、そのようないわば環境の調整は支援の片輪でしかありません。

 いくら衣食住、生活費、治療、福祉サービスの利用を整えても、その生活に満足はできず、ギャンブルや飲酒などに溺れ、経済的、身体的、精神的に破たんして行く人や、人間関係上のトラブルを起こす人、再びなんらかの触法行為をしてしまう人がいます。

 つまりは、環境をいくら整えても個人的な因子が原因で、社会生活をそこそこ無事に幸せに継続できないのです。

 これまでは福祉という分野のケースワークとしては制度やサービスにつなげ、生活環境を整えて困らないようにすることで丸く収まるというイメージでもあったかと思います。それにも関わらず、そこで落着けない人は自己決定、自己責任のもと福祉を希望しない人であったり福祉に馴染まない人とされ、いくぶんかの人は刑務所で受刑者として生活を確保していたのではないかという現実に昨今、社会が目を向け始めました。

 私自身、環境をできるだけ整えることは必須であるものの、そののち、そこに家や食べ物があることだけでなく、人間関係においても一方的でない相互の幸せを少しでも感じられることを意識して協力連携しあう必要性を、自分が携わる事業で日々感じています。

 今、司法と福祉の連携が叫ばれるなか、その渦中にいる私はそこに心理の要素も必要であり、その心理は泥くさくといいましょうか、葛藤する生活の場に入っていくような実践的な心理学であることで有用になると感じています。

 昨年の学会に於いて、有志による「性犯罪加害者に対して地域などでできること」というようなテーマで自主シンポジュウムをさせていただきました。

 今後もコツコツと日々の対応を重ねながら、福祉心理士として微力ながらも対象者や社会と協力し育ちあっていきたいと考えています。

 今後とも宜しくお願いいたします。

‹ グループホーム・認知症デイサービス  ぶどうの樹 城戸 由香里

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