学会創設の思いをつなぐ

2016年6月30日

中山哲志(東京成徳大学 応用心理学部 福祉心理学科)s-naka@tsu.ac.jp

学会創設の思いをつなぐ

日本福祉心理学会は平成15年(2003年6月)に誕生しました。今年で創設から14年目、7月に開催される筑波大会が第14回大会となります。創設期から学会に参加した者として、本学会は会員数約400名と小規模な学会ですが、福祉に関わる人びとが集う、どこかしら温もりのある学会として発展してきたとの印象を持っています。

福祉心理学会には,優れた魅力ある方々が多く集まりました。それらの方々には、共通して、日本の福祉をもっと良くしたいとの思いがありました。より良い支援を行うために、心理学に基づき、福祉の対象となる人びとに対する理解を深める。また同時に、支援を行う人びとを支えるための研究を進めていくことも大切であるとの認識を持っていました。

学会創設大会となった第1回大会で大会委員長をされた故長畑正道先生は大会開催に当って「福祉の問題は,社会福祉の機関のみでなく、医療や教育の場でも生じています。そして多くの問題は人と人の関係の中から生まれてきます。したがいまして、かかる問題の解決には広い意味での心理学的なアプローチが不可欠です」「この問題は心理学の専門家だけでは対応しきれません。福祉の現場では、・・・さまざまな職種の方々が仕事に携わっています。この学会には,心理学専門の方々以外に、こういった現場の方々に参加して頂き,日常起こっている問題についてまとめ発表して頂くことを期待しています」と、記されました。

学会創設作業を進めていた私たちに対して、長畑先生や初代理事長となった故岡田明先生は、「ぜひ、やりましょう」と発破をかけられました。先生達は率先して大学関係者や現場関係者に会への参加を呼びかけられました。

また、福祉心理士創設に関係した協議で、資格条件に関係して、故石井哲夫先生が、「現場で働く人を大切にする」資格であってほしい、と発言されたのを覚えています。

こうした学会や資格の創設に関係した経過を思い出すとき、故人となられた長畑先生や岡田先生、石井先生等の発言が脳裏に浮かびます。先輩の方々の考えや思いを大切にし,今後の学会の発展にぜひ皆さんとともに力を尽くしていきたいと考えます。

中山哲志先生のプロフィール

自己紹介になりますが、私は大学に異動するまで、聴覚障害教育に約20年携わっていました。ですから現在の大学での研究や教育の基盤にあるのは、聴覚障害学校での経験であり、そこで出会った子どもたちやそのご家族から教えられたことです。いまでも、聴覚障害学校との関わりは強く、研究実践にかかわる研究機会に参加しています。最近では,リテラシーや重複障害の分野に関係した実践的研究に参加しています。重複障害教育では、山梨県立盲学校での実践に関係して「梅津八三著作集(全三巻)」と出会いました。この著書は長畑先生が提案されて購入した学科図書でした。福祉心理学につながる内容が書かれていると思います。その他に取り組んでいる研究内容は、主に障害に関係したもので、現在、科研では発達障害と社会的養護に関係する内容の研究を継続しています。

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